鍋の中にはカルプフェン

こい(@gyaradus)のブログ

【カクヨム】『死人とサーカス』──[感想①]暑くて虚無なんだわ

 ツイッターのFFであるカワカミさんが、『死人とサーカス』という本格ミステリカクヨムで連載している。


 現在、第18話目で、密室トリックの議論が始まった。読者であるわたしは、解く気満々であるから、いまのところ書き留めているメモを、作品の感想も兼ねて、載せていくこととする。当然ながらネタバレ注意である。



【閉演後のモノローグ】
・事件の終わりが事件の始まり。「閉演」というワードで事件を舞台劇になぞらえるところは『虚無への供物』を意識しているんだろう。
・探偵役と並んで帰るヒロイン。探偵がなにかしでかしたらしいところは『バイバイ、エンジェル』を思わせるが……。
・いわゆる「平和な日常」を送る人間たちに恐怖をおぼえる場面。視点人物の志帆が、自分を「道化」と形容しているが、『死人とサーカス』というタイトルから考えると、「死人」とは“このようなひとたち”を指しているのだろう。


【プロローグ】(殺人ピエロ登場)
・「だらだらと続く坂」「夏」「古本屋」ときたので、『姑獲鳥の夏』が思い浮かんだ。あまり関係はなさそうだが。
・『暗闇坂』では、横浜の歴史から舞台描写の異化を行っていたが、思えば、乱歩の『D坂』を意識していたのかもしれない。
・バラバラ死体登場。クラブと一緒にジャグリングしてしまうのが「死体」「物」の同列化を強調しているといえるのか……。


【第1話 空木要(1)】(まったり談話で始まる1話目)
・小説が現実を侵食しはじめる、という構成が『匣の中の失楽』っぽい。高校生身分で「行きつけ」の喫茶なんかがあるところ、メンバーのひとり(御堂)が行方不明になっているところなんか……。
・「一年前の事件」の言及。御堂なる同級生が空木に救われたそうだが、実質の探偵役は紙谷拓人という警察関係者だったらしい。冒頭のモノローグから、本作の探偵役は空木だと予想できるのだが、かれの出番はいかに……?
・空木くんが自作の文についていう「冗長」という評は、作者(カワカミ氏)がどこかの賞に作品を投稿した際にくだされた評価らしい。文体は硬いというほどではないし、怪人がカタカナで叫ぶあのテンションの高さは、高木彬光島田荘司二階堂黎人あたりの系列の気がしたが……。
・ミドーくんは自主制作映画を撮るつもりだったらしい。いかにも事件に絡みそうだ。


【第2話 空木要(2)】(工場に残された大量の血!?)
・外が暑い! 『虚無』だ! 『匣』だ!
ポニテをいちおう応援しておく人間なので、志帆が髪を切ったらしいのが残念。
・ミドーくんはいかにもな変人キャラらしい。空木くんの作品がはじまりだそうで。空木の「空」は「空(シューニャ)」で、「虚無」とかけてあるのかもしれない。「カナ」は「ひぐらし」?(なんて竜騎士07)
・矢津井くん、海にいったところをやたら強調されてるけど、犯人じゃねえのか?(モノローグにいないしよお!! どこかの孤島を行き来して濡れたんだろ!!)
・「血と骨と肉片だけ存在する」という演出がなかなか不気味。なんだかんだミステリ読みなので、「これをどう料理するか?」という方向に意識が行く。


【第3話 御堂司】(ミドーくんとカナカナ、運命の出会い)
・ミドーくん登場。「満開の桜の下」「気味が悪い」というのは梶井基次郎坂口安吾か。
埴谷雄高の引用。中二らしい……。さりげにプロローグの古本屋がここで言及される。


【第4話 空木要(3)】(エレベーターにテレビ局に郵便局にバラバラ死体おとどけ)
・お部屋でニュースを見ながら、ころころと興味が移る世間についてあれこれ。冒頭のモノローグや作品のモチーフ(?)から見ても、ここが物語の核心に関わるんだろう。泡坂なら、ここでさらっと流されられた「高校生アイドルの薬物事件」を事件に絡ませそうだが……。
・バラバラ死体をそこら中に目立ちたがりの犯人。ミドーくんがダブらせれているが、けっこうこういうやつは内面ナイーブというのが定石なんだよ(遊☆戯☆王VRAINS的に)。


【第5話 早瀬志帆】(暗号ディスカッションでスタンド・バイ・ミー
・矢津井くんと志帆さんめっちゃバラバラ殺人たのしんでますね~。ばっちり「面白そう」発言に「挑戦状」扱いだぜ。死体探しをたのしむって、『スタンド・バイ・ミー』かと(線路に行くし)。
・地の文では「矢津井の長々とした話」といわれているけど、講義系はめっちゃ長くても構わない、わてぃくし。フェル博士よろしくメタ的に読者に注意しとけばいいんだ。
・暗号の検討。『黒後家蜘蛛』みたいなディスカッションで、こういうノリ好きなんよね。文字の変換を繰り返すわりかし基本的なタイプの暗号だけど、フランス語のスペルをなぜいい感じに知っているんだ青少年たちよ……(これは解けないという悟り)。



[人物評](プロローグ~第5話)
●空木要……われらが探偵役(になると思われるひと)。探偵役のわりに矢吹駆とか御手洗潔みたいないかにもなキャラづけはされていないため、5話時点ではこれといった印象はない。「文芸倶楽部」は偏屈揃いらしいが……。いとこの志帆が「伯母さんのところから本借りる」とかいっているけど、本好きな家庭なんだろうか。
●矢津井惣太……犯人。まだそうとは決まってないけど、「他人事みたいなノリで事件に接していたら自分たちがその中心だったことに気づく~」みたいな歌野晶午みたいな感じに持っていけるので、ぜったい犯人だと思う。イツメンみたいな雰囲気出しておいてモノローグにいなかったし。ひょろメガネ。警察関係者。海水浴。朝から巨大かき氷。
●早瀬志穂……メインヒロイン(?)。ポニテ切ってワカメちゃんヘアなのは、『ア○ザー』とか『ミデ○○ム』とかの流れなんだろうか。
●御堂司……厨二病の中二。あらすじで事件を引き起こしたってバリバリ書かれているけど、かれが犯人というのはカモフラージュだろう。
●富田……ピエロに遭遇した人物だが謎のベールに包まれている。文芸倶楽部のメンバーのひとりということもあって今後の活躍に期待。
●紙谷拓人……剣持とか水原警部みたいな便利な警察関係者ポジ? このひといなかったらこの話始まらなかったよね。