鍋の中にはカルプフェン

こい(@gyaradus)のブログ

2022-01-01から1年間の記事一覧

【平安文学】『紫式部日記』──「夢は自分の手で掴みとる」とかいう人間のつまらなさ

かく、人に異ならむと思ひ好める人は、かならず見劣りし、行く末うたてのみ侍るは。(紫式部『紫式部日記』) 紫式部日記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫) 作者:紫式部 KADOKAWA Amazon 大学時代の後輩が、小説家をやっている。学生時代に、かれが書いた作品…

【平安文学】『枕草子』「二六〇 御前にて人々とも」──コロナから生還して見る景色

私を苦しめていたコロナもついに去り、10日間ぶりに外出することにした。 高校数学の学参を片手に、舗装工事中の街路や、刈り取られた草木を眺めながら、近辺を歩く。曇りということもあって、空はたいした景色ではなかったが、それでもひさしぶりの自然風景…

【アシモフ】『夜来たる』──2022年9月に読んだ本について

9月に読んだ本からとくに気になった5作品の紹介。 1.『夜来たる』(アイザック・アシモフ) 夜来たる 作者:アイザック アシモフ 早川書房 Amazon ミス研《リーズニング・クラブ》の9月の課題本。アシモフのアイデアメーカーぶりを存分に堪能できる短編集…

【平安文学】『讃岐典待日記』──コロナ食らって気分は堀河天皇

新型コロナウイルスについて、先週(10月31日~11月6日)の週間感染者数で日本は世界1位だったらしい。どうしてまあ、世の中、こんなに感染するひとが多いのか不思議である。マスクをつけ、人混みを避け、会話は距離をとって行う。食事はひとりでする。これだ…

【安部公房】『第四間氷期』──2022年8月に読んだ本について

8月に読んだ本からとくに気になった5作品の紹介をしていく。10月31日になにをいっているんだという話だが、なんかこう、腰を据えて書こうとすると作業をはじめるのが億劫になるから、ここまで怠ってしまった。ということで、今回はとにかく更新することを…

【平安文学】『更級日記』──物語に飢えている状態が恋しい?

更級日記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫) KADOKAWA Amazon はしるはしる、わづかに見つつ、心も得ず心もとなく思ふ源氏を、一の巻よりして、人も交じらず、几帳の内にうち伏して、引き出でつつ見る心地、后の位も何にかはせむ。(菅原孝標女『更級日記』) …

【笛吹太郎】『コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎』――2022年7月に読んだ本について

7月に読んだ本からとくに気になった5作品の紹介。 1.『黒後家蜘蛛の会1』(アイザック・アシモフ)黒後家蜘蛛の会1【新版】 (創元推理文庫)作者:アイザック・アシモフ東京創元社Amazon ミス研《リーズニング・クラブ》の7月の課題本。もともと気に入って…

【カクヨム】『死人とサーカス』──[感想①]暑くて虚無なんだわ

ツイッターのFFであるカワカミさんが、『死人とサーカス』という本格ミステリをカクヨムで連載している。死人とサーカス - 閉演後のモノローグ - カクヨム https://t.co/qn5sLrI4lX— こい (@Gyaradus) 2022年8月26日 現在、第18話目で、密室トリックの議論が…

【クリスティー】『謎のクィン氏』――2022年6月に読んだ本について

6月にミステリ短編『モノクローム・ドロップ』の制作を行った。そのうえで参考にした5作品の紹介を行う。 1.『謎のクィン氏』(アガサ・クリスティー)謎のクィン氏 (クリスティー文庫)作者:アガサ・クリスティー,嵯峨 静江早川書房Amazon ミス研《リーズニ…

【北村薫】『秋の花』――2022年5月に読んだ本について

5月に読んだ本からとくに気になった5作品の紹介。スティーヴン・キングをはじめ、「小説を書きたかったらとにかく小説を読むことだ」という作家は多いんだが、読んでたら書いているものについて自信をなくしたり、修正を加えたくなったりするのはあるある。…

【ゴーゴリ】『外套・鼻』──2022年4月に読んだ本について

4月に読んだ本からとくに気になった5作品の紹介。 1.『ナイルに死す』(アガサ・クリスティー) ナイルに死す〔新訳版〕 エルキュール・ポアロ (クリスティー文庫) 作者:アガサ クリスティー 早川書房 Amazon ミス研《リーズニング・クラブ》の4月の課題…

【ゴーゴリ】『肖像画』──「自分が描きたい世界」を“見透す”ことの価値

前々回の記事ではじめて書いたホラー小説『ゴールデン・インク』を紹介した。こういうのはだいたい「予想以上に読まれていて恐縮しています……」とかいうのがお約束なのだが、わたしの作品の閲覧数は、なんと2PVであった。しかもその2PV分は最初の1話目にしか…

【マンガ】『メジャー 68巻』――マリーンズの佐々木朗希は164キロ13奪三振の完全試合なのにおれはなにをやっているんだ?

自分の中にあった渦巻く熱気のようなものが、最近は弱くなってきたのを感じる。読書も勉強もしないで、スマホでマスターデュエルばかりをするようになった。すごくおもしろく、駆け引きに熱中できるが、のめりこむ原理自体はギャンブルとあまり変わらず、勝…

【S・キング】『ミスト 短編傑作選』――2022年3月に読んだ本について

3月にミス研(リーズニング・クラブ)での活動として、人生初となるホラー短編の執筆を行った。初めて書いた短編ホラー小説ですゴールデン・インク - カクヨム https://t.co/MMcljduxDV— こい (@Gyaradus) 2022年4月3日 今回は、作品制作においてとくに影響…

【ミステリー】『モルグ街の殺人』他──新入生にオススメの推理小説40冊

1.『モルグ街の殺人』(エドガー・アラン・ポー) 最初の名探偵デュパン。現実にいそうな名探偵は、推理小説というジャンルがなかった時代に現れたこの男だけ!? ニューヨークでじっさいに起きた殺人事件にデュパンが挑む「マリー・ロジェの謎」、歴史あ…

【ゴールディング】『蠅の王』――2022年2月に読んだ本について

2月に読んだ本からとくに気になった5作品の紹介。 1. 『呪われた町』(スティーヴン・キング)呪われた町 上 (文春文庫)作者:スティーヴン・キング文藝春秋Amazon呪われた町 下 (文春文庫)作者:スティーヴン・キング文藝春秋Amazon ミス研(リーズニング・…

【フォークナー】『響きと怒り』――2022年1月に読んだ本について

いちおう本を紹介するブログのつもりで書いているので、活動記録も兼ねて2022年1月中に読んだ本から5冊について書き記す。 1. 『ミザリー』(スティーヴン・キング) ミザリー (文春文庫) 作者:スティーヴン・キング 文藝春秋 Amazon ミス研(リーズニング・…

【イタリア文学】『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』――「2022年の抱負」はどんどん発信してしまえ

2022年になった。どこのブログも新年には「今年の抱負」を発表するのが常のようで、それに倣ってわたしもここに「2022年の抱負」を公開する。 1.Twitterをやめる 新年早々、不穏な抱負である。このブログを読んでいるひとのほとんどはTwitter経由だろうか…

【チェスタートン】『木曜日だった男』──1月3日の新幹線に乗ってはいけないという教訓

年末年始というやつは、体力の浪費以外の何ものでもない。中でも最低最悪なのが、新幹線での移動である。 この国の人間はとてつもなく頭が悪いようで、どいつもこいつも正月休みからいきなり1月4日に仕事を再開するという愚行をとる。新幹線のホームはわらわ…