鍋の中にはカルプフェン

こい(@gyaradus)のブログ

文学

【ベルクソン】『笑い』──大喜利タグから感じる空虚さ

江戸川乱歩賞の応募作品が「ふざけたペンネームだから」という理由で減点された、という話がSNSで話題になっている。そんなんで減点すんなよ……と思って調べてみたら、ほんとうにダサい名前だった。こんな股間に甲殻類がくっついたような作者名では、どんな大…

【ショーペンハウアー】『幸福について』──すぐに「いいね」されないほうが逆によい?

いま読んでいる連載マンガの最新話の評価がどうも芳しくない。コメント欄を見ると、「オチがわからない」「絵の雰囲気でごまかしている」など、作品の構造を把握できていない意見が多く見られる。 これでは作品が浮かばれまい、と思って、わたしとしては珍し…

【トルストイ】『戦争と平和』──だれもが“物”になりたがっている

心に虚無がおとずれることがある。なににも集中できず、頭に浮かぶのは、広がる白地にΩ(空っぽな頭)のマークが記されているイメージだけ。とりあえず外を出歩いて、名前を知らない雑草が無秩序に生い茂っている様子を眺める。黒ずんだ雲が広がっている様子を…

【吉田兼好】『徒然草』「第41段」──ほんとうは劣等生の回顧録?

メモによると、5月28日に『徒然草』を読み終えたらしいが、その瞬間のことをおぼえていない。現代語訳ですでに既読済みだったし、その後もたまにちらほら読み返していたから、「これで終わった」という感触がなかったためかもしれない。 今回原文で読んでい…

【清少納言】『枕草子』「十九 たちは」──「たちは たまつくり。」

たちは たまつくり。 (清少納言『枕草子』) 枕草子(上) (講談社学術文庫) 作者:上坂 信男,神作 光一,湯本 なぎさ,鈴木 美弥 講談社 Amazon 6月中に『枕草子』を完読しようとちまちま読み進めていたら、こんな文章が出てきた。たちは たまつくり。この十九段…

【ショーペンハウアー】『読書について』「著作と文体について」──「流麗な文章」よりも深いことをいうためにはどうすべきか?

ニューコース参考書 中学国語 (学研ニューコース参考書) 学研プラス Amazon 学研のテキスト『ニューコース参考書 中学国語』を使って日本語を勉強している。日本語の文法の入門書として手頃な本をあちこちで探し回った結果、これがもっとも使いやすいと判断…

【紫式部】『源氏物語』「幻」「雲隠」──半年ともに過ごした友、死す

源氏物語 巻七 (講談社文庫) 講談社 Amazon 昨夜、『源氏物語』の「幻」を読み終わった。半年かけて読んできた源氏の物語がついにここで終わりを迎える。 この章は虚無にも似た静かさだけがある。前章「御法」で紫の上を喪った哀しみに暮れながら、源氏は自…

【モーパッサン】『脂肪のかたまり』──鬱な話は鬱な気分をたのしむためだけのものか?

「言葉フェチ」だの「読書中毒」だのと自称しているブロガーが叩かれている。《鬱漫画ランキング》なるものを発表して、その推薦文に「大嫌い」だの「焼却処分にしろ」だの嫌悪感を表した文章を添えたことで、反感を買っているようだ。 ツイッターでバズる推…

【仮名垣魯文】『安愚楽鍋』──物書きの「信念」ってなんぞや?  

安愚楽鍋 (岩波文庫) 作者:仮名垣 魯文 岩波書店 Amazon 仮名垣魯文の『安愚楽鍋』を帰りの電車の中で読み終えた。明治初期、都内の西洋料理店にやってきたさまざまな客たちが、牛鍋を食べながら、自らの体験談をだらだら話していく……という形式の戯作小説だ…

【ホメロス】『イリアス』「第4歌」──上位存在からすると人間ちゃんは猫みたいなもの?

ゲームのやりすぎか身体がなまってきていたので、近くの海岸で身体を動かしてきた。息を切らしてベンチで読んだのは、ホメロスの『イリアス』だ。この前、ここで読んだのはヘミングウェーの『老人と海』だった。このふたりを並べるのはおかしな感じがするが…

【スピノザ】『エチカ』「第三部」──SNSの誕生祝いとかいう孤独を加速させる文化

一昨日くらいから頭痛が酷くて、すべてにおいて無気力になっている。気圧がかわったわけでもショックな出来事があったわけでもないため、どう考えてもポケモンSVをやらなくなったことによる離脱症状である。アルコールにしろカフェインにしろ、こういうので…

【紫式部】『源氏物語』「蛍」──玉鬘が“物語論”をきかされる相手だった理由

瀬戸内寂聴訳の『源氏物語』6巻をそろそろ読み終わりそうなので、残る7巻~10巻を買いに近所の書店にいったが、置いていなかった。 それではまだ下巻しか読んでいない『枕草子』の上と中を買っておこう……と思ったら、講談社学術文庫のコーナーが棚ごとなくな…

【鎌倉文学】『徒然草』「第58段」──封印~さらば、ポケモンSV~

「道心あらば、住む所にしもよらじ。家にあり、人に交はるとも、後世を願はんに、かたかるべきかは」と言ふは、さらに後の世を知らぬ人なり。げには、この世をはかなみ、必ず生死をいでんと思はんに、なにの興ありてか、朝夕君につかへ、家をかへりみる営み…

【鎌倉文学】『徒然草』「第111段」──ポケモンのランクマッチは死刑レベルの悪事だった!?

はーー、飽き性なわたしのことだから、ポケモンSVのランクマッチもすぐに飽きるだろうと思っていたが、3ヶ月ずっと飽きないままだ。おかげで最近は3桁順位に入ることも珍しくなく、新鮮味もなくなってきた。 ↑この前騒いでいたときよりも順位が高い 人生は短…

【チャンドラー】『ロング・グッドバイ』──こちらが病んでるときはだれも声なんてかけてくれない

ここ最近、精神が疲弊しきってしまって、気晴らしにポケモンのランクマッチをやるくらいしかできていない。いちおう目標の3桁に到達したが、それでなにかが変わったというわけでもなく、周囲の人間たちの無関心ぶりが確認できただけだった。 ときどきSNS上で…

【シェークスピア】『マクベス』──マクベスにポケモンバトルをやらせたらクソ雑魚!?

ポケモン対戦というのは基本的にクソゲーであり、あちらのヘイラッシャは地割れを3連続で当て、ウルガモスは神速されたら必ず火傷させてくるのに対し、こちらの電磁波で麻痺ったピンクハゲ(ハピナス)は悪の波動も食らって64%でしか動けないくせに平然と地球…

【ドストエフスキー】『罪と罰』──「ファッションキチガイ」という言葉が嫌い

問題行動を起こす人間にたいして「ファッションキチガイ」ということばが使われることがある。「ほんとうはふつうの人間なのに、わざとおかしなことをして気を引こうとしている!」くらいのニュアンスで使われているようだが、わたしはこのことばが嫌いであ…

【平安文学】『源氏物語』──2022年11月に読んだ本について

ついさっき10月分の読書を振り返ったばかりだが、いまからまたしても瞬足巧打(とは??)で11月分の読書を振り返っていく。 1.『エジプト十字架の秘密』(エラリー・クイーン) エジプト十字架の秘密 (角川文庫) 作者:エラリー・クイーン KADOKAWA Amazon…

【平安文学】『大鏡』──2022年10月に読んだ本について

いつもブログを読んでくださっている皆さまへ ポケットモンスター スカーレット -Switch 任天堂 Amazon とつぜんですが、私はいま自分に失望しています。本来ならば年末に10月~12月までの読書記録を一気に更新する予定でしたが、『ポケットモンスター スカ…

【平安文学】『紫式部日記』──「夢は自分の手で掴みとる」とかいう人間のつまらなさ

かく、人に異ならむと思ひ好める人は、かならず見劣りし、行く末うたてのみ侍るは。(紫式部『紫式部日記』) 紫式部日記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫) 作者:紫式部 KADOKAWA Amazon 大学時代の後輩が、小説家をやっている。学生時代に、かれが書いた作品…

【平安文学】『枕草子』「二六〇 御前にて人々とも」──コロナから生還して見る景色

私を苦しめていたコロナもついに去り、10日間ぶりに外出することにした。 高校数学の学参を片手に、舗装工事中の街路や、刈り取られた草木を眺めながら、近辺を歩く。曇りということもあって、空はたいした景色ではなかったが、それでもひさしぶりの自然風景…

【アシモフ】『夜来たる』──2022年9月に読んだ本について

9月に読んだ本からとくに気になった5作品の紹介。 1.『夜来たる』(アイザック・アシモフ) 夜来たる 作者:アイザック アシモフ 早川書房 Amazon ミス研《リーズニング・クラブ》の9月の課題本。アシモフのアイデアメーカーぶりを存分に堪能できる短編集…

【平安文学】『讃岐典待日記』──コロナ食らって気分は堀河天皇

新型コロナウイルスについて、先週(10月31日~11月6日)の週間感染者数で日本は世界1位だったらしい。どうしてまあ、世の中、こんなに感染するひとが多いのか不思議である。マスクをつけ、人混みを避け、会話は距離をとって行う。食事はひとりでする。これだ…

【安部公房】『第四間氷期』──2022年8月に読んだ本について

8月に読んだ本からとくに気になった5作品の紹介をしていく。10月31日になにをいっているんだという話だが、なんかこう、腰を据えて書こうとすると作業をはじめるのが億劫になるから、ここまで怠ってしまった。ということで、今回はとにかく更新することを…

【平安文学】『更級日記』──物語に飢えている状態が恋しい?

更級日記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫) KADOKAWA Amazon はしるはしる、わづかに見つつ、心も得ず心もとなく思ふ源氏を、一の巻よりして、人も交じらず、几帳の内にうち伏して、引き出でつつ見る心地、后の位も何にかはせむ。(菅原孝標女『更級日記』) …

【ゴーゴリ】『外套・鼻』──2022年4月に読んだ本について

4月に読んだ本からとくに気になった5作品の紹介。 1.『ナイルに死す』(アガサ・クリスティー) ナイルに死す〔新訳版〕 エルキュール・ポアロ (クリスティー文庫) 作者:アガサ クリスティー 早川書房 Amazon ミス研《リーズニング・クラブ》の4月の課題…

【ゴーゴリ】『肖像画』──「自分が描きたい世界」を“見透す”ことの価値

前々回の記事ではじめて書いたホラー小説『ゴールデン・インク』を紹介した。こういうのはだいたい「予想以上に読まれていて恐縮しています……」とかいうのがお約束なのだが、わたしの作品の閲覧数は、なんと2PVであった。しかもその2PV分は最初の1話目にしか…

【S・キング】『ミスト 短編傑作選』――2022年3月に読んだ本について

3月にミス研(リーズニング・クラブ)での活動として、人生初となるホラー短編の執筆を行った。初めて書いた短編ホラー小説ですゴールデン・インク - カクヨム https://t.co/MMcljduxDV— こい (@Gyaradus) 2022年4月3日 今回は、作品制作においてとくに影響…

【ゴールディング】『蠅の王』――2022年2月に読んだ本について

2月に読んだ本からとくに気になった5作品の紹介。 1. 『呪われた町』(スティーヴン・キング)呪われた町 上 (文春文庫)作者:スティーヴン・キング文藝春秋Amazon呪われた町 下 (文春文庫)作者:スティーヴン・キング文藝春秋Amazon ミス研(リーズニング・…

【フォークナー】『響きと怒り』――2022年1月に読んだ本について

いちおう本を紹介するブログのつもりで書いているので、活動記録も兼ねて2022年1月中に読んだ本から5冊について書き記す。 1. 『ミザリー』(スティーヴン・キング) ミザリー (文春文庫) 作者:スティーヴン・キング 文藝春秋 Amazon ミス研(リーズニング・…