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こい(@gyaradus)のブログ

【鎌倉文学】『徒然草』「第111段」──ポケモンのランクマッチは死刑レベルの悪事だった!?

 はーー、飽き性なわたしのことだから、ポケモンSVのランクマッチもすぐに飽きるだろうと思っていたが、3ヶ月ずっと飽きないままだ。おかげで最近は3桁順位に入ることも珍しくなく、新鮮味もなくなってきた。

↑この前騒いでいたときよりも順位が高い

 人生は短い。それゆえ、死がおとずれることを忘れて、遊びに現(うつつ)を抜かし、修練を怠ってはいけない。というのは、吉田兼好の『徒然草』で繰り返し強調されていることだ。ということで、わたしもそろそろポケモンの魔の手から逃れて、自分のだらけた精神を矯正するため、『徒然草』を読み進めていた。

囲碁・双六好みてあかしくらす人は、四重・五逆にもまされる悪事とぞ思ふ。」と、或る聖の申ししのと、耳にとどまりて、いみじくおぼえはべる。
(吉田兼好徒然草』)

囲碁や双六ばっかやってるやつは四重罪・五逆罪にもまさった悪事をしている、とどこかの聖人がいってた」と吉田兼好はいっている。南北朝時代の娯楽といえば、囲碁と双六だったらしい。この聖人の生きた時代にポケモンSVは存在しなかったが、もしもこの聖人がこの魔のゲームのことを知っていれば、まちがいなく「四重罪・五逆罪にもまさった悪事」と扱ったことだろう。
 五逆罪には「母殺し」「父殺し」が含まれている。ほんの30年前まで判決が死刑または無期懲役しか存在しなかった尊属殺人というやつだ。これをこえるというポケモンバトルは、それこそ外患誘致罪レベル、つまりは死刑レベルの悪事ということではないか。なによりも大事であるはずのもの、自分を殺しているのである。
 ……といっても、そんな悪事だという実感が沸くわけもなく、また今日もポケモンのランクマに熱中してしまった。まあ、こういった迷いが積み重なることでこの熱のうねりからやがて抜け出せることだろう、と未来の自分を信じることにする。ところで、「第111段」のひとつ前、「第110段」で、吉田兼好は双六の上手い人に勝つ方法をきいているのだが、かれもまたいまのわたしのように双六に熱中してしまった過去があったのだろうか……(ちなみに、勝つには「負けないように動く」のがいいらしい)。

 内大臣(元・頭の中将)から「変」「出来の悪い」とボコボコにdisられている娘、近江の君も、「常夏」で初登場したときに双六をやっている。このとき、「小賽、小賽」と相手に小さな目が出るように早口で祈っており、内大臣に「ああ、情けない」と思われてしまっているのだが、わたしがポケモンバトルで「じゃれつく外せ、外せ!」といっているのに通じるものがある。なんだか近江の君に親近感がわいてきた。