鍋の中にはカルプフェン

こい(@gyaradus)のブログ

【ポケモンSV】S4シングル最終1457位──鉄槌!!剣舞テツノカイナ

 ポケモンSVのランクマッチシーズン4が終了しました。最終レートは1912.195と、前期に続いてレート1900達成。最高レートは1960.873で、レート2000達成まであと2歩、最終3桁達成まであと1歩。12月の初ランクマ参戦から着実に実力を伸ばしていっています。
 2ヶ月続いたパラドックス環境。前期では対セグカミを意識したイルカマン軸構築を使用しましたが、今期はセグカミ軸でパーティー構築を行い、メタをさらにメタする運用を意識しました。これまで同様、今回も、シーズン4をともに戦い抜いたメンバーを紹介していきます。

 

1.メタパルト(ドラパルト)

 前シーズンに続いて選出率1位のエース。今回はクエスパトラと組ませていたことから、壁貼り要員と勘違いした相手(スカーフハバカミ、挑発アーマーガア)を返り討ちにして、一気に相手の構築を崩していくことができた。強力さゆえにメタパルトの初動に勝敗が賭けられている場面も多く、シーズン4はレート2000を目前として、鬼火を3試合連続で外して一気に連敗してしまった。ここは構築の弱さといえるだろう。


2.セグラウド(セグレイブ)

 メイン物理アタッカー。ニックネームはcloud(電気と氷を操るイメージ)から。D極振りのチョッキ型で、圧倒的な特殊耐久を誇る。その硬さは眼鏡ハバカミのムーンフォース(抜群)や晴れ眼鏡炎テラスコータスの噴火すらも耐えて返り討ちにしてしまうほど。電気テラバーストで、受けに出てきたヘイラッシャやアーマーガアに重傷を負わすこともでき、サイクル戦の生命線ともいえる活躍を見せてくれた。


3.シャクラガミ(ハバタクカミ)

 メイン特殊アタッカー。ニックネームは雷神シャクラ(電気テラスと瞑想)から。瞑想と痛み分けにより、対セグカミ用に出てきたジバコイルを起点にすることが可能。スカーフ持ちテツノブジンまで抜き調整が行われた速さに、特殊方面の硬さ、等倍範囲の広さと高い火力で、役割破壊を行った後、そのまま3タテする光景は珍しくなかった。環境ナンバーワンポケモンの名に恥じない強力な性能の持ち主。

 

4.クエスーフィ(クエスパトラ)

 銀の弾丸。ニックネームはスーフィズム(格闘テラスと瞑想)から。先述の通り、ドラクエ構築偽装要員として選出画面から戦況に影響を与える役目を担っていたが、単体性能の強さから丸裸の状態で3タテを量産してくれた。残飯&みがわり&はねやすめによる生命力は圧倒的で、呪いキョジオーン一本で処理を行おうとする相手などは、みがわりに成功した時点でゲームエンド。アシストパワーしか打点がないため悪タイプには手も足もでないはずだが、回復連打により、マスカーニャなど火傷ダメージだけで突破することもできた。最強の嵌め性能の持ち主といっても過言ではないだろう。

 

5.ミタカイナ(テツノカイナ)

 最後にパーティーに加入した秘密兵器で、レート1900越えの立役者。ニックネームは交換してくれたみたらしさんから。シーズン4時点でテツノカイナの持ち物はとつげきチョッキが8割。AD252振りも多いため、ヘイラッシャ以上の物理耐久ということが忘れられがち。このミタカイナはHB極振りで剣舞持ちと、対物理アタッカーとして最強クラスの性能を持っている。殴り合いで突破しようとしてきたカイリューやトドロクツキを幾度となく返り討ちにし、防塵ゴーグルによる胞子無効で、アラブルタケエース構築を完全にカモにすることができた。


6.ギャードン(ギャラドス

 

 いつもの切り札。フォレトスカイリュー、アーマーガアなど、今期ではさまざまな物理受けを使用したが、けっきょくミタカイナとの相性補完と、対アーマーガア、ヘイラッシャにおける強さから今期もパーティーの守護神となった。今期後半からすこしずつ数を増やしてきたカバルドンやイダイナキバにたいしては初動を止める重要な役割を帯びており、イルカマン、マリルリハッサムといったハバタクカミ対策のポケモンを受ける上でも重要な役割を帯びていた。


 今期は序盤で瞬間31位、中盤で60415位と、いまだかつてないほどに順位が上下したシーズンだった。けっきょくのところ、序盤と中盤の順位がどうあれ、最終的にはパーティーの完成度とプレイヤーの腕前が適正順位まで運んでくれることということがわかる。この4ヶ月、ポケモン漬けの毎日だったが、しばらくは休憩し、来期は後半戦から頑張ることにしよう。

 

ラタトゥイユといえばレミーのおいしいレストランなひと

 

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●作品紹介(このブログのノルマ)

 今回は未来ポケモンのテツノカイナ(鉄の腕)大活躍ということで、鉄の腕が鍵を握る(?)未来世界のSFミステリ『はだかの太陽』(アイザック・アシモフ)を紹介します。『鋼鉄都市』で活躍した刑事イライジャとロボット・ダニールがふたたび手を組んで惑星ソラリアで起こった殺人事件に挑戦するシリーズ第2作。惑星ソラリアは、わずかな人間とその手伝けをする圧倒的多数のロボットで社会が構成されたおどろくべき星。人間は文化的に映像以外で接触することがほとんどなく、ロボットは三原則に基づいて人間に危害を加えることでできない。この状況下でどのように殺人を実行することができたのか。前作に劣らずSFと謎解きを見事に噛み合わせ、どちらの成分も存分にたのしませてくれる一作です。

 

【ポケモンSV】俺のフォレトス

 俺のフォレトスは……、


 まず、特性は「がんじょう」。理由は多くの人が考えていることだと思うが、キノコのほうしを無効化する「ぼうじん」よりも不意の炎テラスやハバタクカミ対面で確実に役割を遂行できてヘイラッシャの前に居座れる「がんじょう」の方が断然お得だから。

 続いて技は、

一.ジャイロボール
二.じならし
三.ステルスロック
四.どくびし
 一のジャイロボールについて。アイアンヘッドの方が威力安定だが、これを選ばなかった理由は、もちろんブーストエナジー/クォークチャージで素早さを上昇させたパラドックスポケモンへの火力指数の高さが魅力だから。
 二のじならしについて。後続へのサポートとして覚えられそうな地面タイプの強力技がこれ位しかないから。まさか鋼タイプに半減になるとびかかるを覚えさせる人はいないだろう。
 三と四は、いうまでもなく後続のポケモンの起点作成のため。まあ、ほとんどの場合ステルスロックだけでもOK だろうが、相手の控えがラウドボーンやトドロクツキの場合だあと居座って回復されてしまうのでどくどくびしでその代わりどくどくのターン経過ダメージで沈めてやろう、ってことで。逆にどくびしを回収する毒タイプ(マルノームなど……もっともこいつを使う人は少ないと思うが)にはじならしで。
 これで死角無し! ある意味で最強のポケモンだなwwww


 以下、本編。

 ツイッターでFFのマヌヌ2号さんが推していたポケモンで、対セグカミ&起点作成用に運用してみました。なかなか使い心地がいいです。攻勢に出られる起点要員の代表格であるキラフロルと比べると、初手対面でハバタクカミを確1にできるという圧倒的な強みを持っています。セグレイブのテラス地震もオボンこみで3発まで耐えるため、テラス切りを促しつつ、じならしで後続へのサポートを行うことが可能。思いのほか毒菱を撒ける場面があるので、HDてっぺきキョジオーンと合わせて毒々菱ステロをしまくっています。

 シーズン2日目とはいえフォレトス絶対選出(コノヨザルみたいないかにも不利な相手がいても選出した)で200位代に入ってしまったから、想像以上にこいつやれるぞ……。

(※追記:ジャイロボールはセグレイブ対面で火力が出ないのでオボン持たせてる限りはアイヘのがいいです。あと隠密サーフゴー対面考えて、じならしよかじしんのが良さげ)

 


●作品紹介(このブログのノルマ)

 とりあえずフォレトスがなんか棘をばらまきまくっているので、フェルディナント・フォン・シーラッハの短編「棘」を紹介します。美術館の監視員のおじさんが、周囲のひとのいろいろなポカが重なって、棘を抜いてる少年の大理石像を23年も監視し続けることになった結果、頭おかしくなっちゃう話です。人間、代わり映えしない毎日に耐えられるようにはつくられていないようなので、なんか憂鬱になったら模様替えするのも一つの手か……。

【ポケモンSV】S3シングル最終2166位──鋼ドラパルトでぶち壊していけ!!

 ポケモンSVのランクマッチシーズン3が終了しました。SVから初参加となるランクマッチですが、今回はじめてレート1900以上(1913.784)で最終日を迎えることができました。トレーナーとして進化が加速しています。
 シーズン3の最終日付近では、セグカミ(セグレイブとハバタクカミの並び)が流行したので、今回のパーティー編成は、その対策を意識したものとなっています。セグカミの強さは、縛れる範囲の広さと受け出し先にかかる負荷の大きさ。双方に隙を作らず、対面で優位をとれる立ち回りを意識しました。以下、シーズン3最終日をともに迎えた6匹のメンバーを紹介します。

 

1. メタパルト(ドラパルト)

 シーズン3のエース。名前はメタル(鋼テラス)と接頭詞「meta」から。対カイリュー&セグカミラッシャ用兵器。ときに先発、ときに後衛として、数々のアタッカーを機能停止に追いやった。Aぶっぱドラゴンアローと鋼テラバの補完は抜群で、セグカミとカイリューに圧倒的優位。鬼火祟り目で、受けにきたヘイラッシャやアーマーガアを逆に仕留めて相手の構築を破壊することもザラ。1匹で戦局をものにできるパーティーの要だった。選出率はとうぜんのナンバーワン。

 

2. シノオカタ(キョジオーン)

 シーズン3の相棒枠。名前は死(霊テラス)と伯方の塩から。対パラドックス用兵器としてシーズン序盤から活躍したが、隠密サーフゴーの再増加によって一時控えに。しかし、セグカミが環境の中心となると、サポート要員として復帰した。ボルカマンの後衛としてカミなど相手のアタッカーを受けてから、そのままステロを撒き、起点を作成するのがおもな仕事。とうぜんながら低火力の相手は封殺できてしまうので、サイクルを強いることができてかつ、対面でも勝利できてしまう強力な性能を持っている。


3. ドラメテオ(サザンドラ)

 前シーズンに続いて役割破壊の鬼。環境初期はパラドックスポケモンの試用のため控えメンバーだったが、隠密サーフゴーに受け出しできる強力なアタッカーとして戻ってきた。チョッキ持ちの硬さは健在で、鋼テラスを切れば、セグカミラッシャ3匹に有利対面をとれる。シノオカタが苦手とする隠密サーフゴー、ツツミ、ロトムを返り討ちにすることができたため、この2体でほとんどの特殊アタッカーにストップをかけることができた。

 

4. ボルカマン(イルカマン)

 セグカミ破壊のキーマン。名前はボルト(電気テラス)と役割論理のボーナスの略字から。耐久無振りならハバタクカミはジェットパンチ一発。電気テラスを切れば、テラバでヘイラッシャを吹き飛ばせ、受けサーフゴーのでんじはも無効にできるため、止めるのは非常に困難。このボルカマンの確1圏内になるよう相手を消耗させていくのが基本戦術で、ナイーブフォルムの後衛にはどのポケモンがマストかを考えることがこのパーティー構築のベースとなっている。

 

5. ドゲザング(ドドゲザン)

 名前はドゲザンとサングラス(黒い眼鏡)から。ベーシックな悪テラス剣舞型だが、それゆえ強い。ハバタクカミを後投げから縛れ、負けん気であまえるやマジフレをカモにできる。対面ではセグレイブに択を強いることができ、ヘイラッシャをふつうに3回殴って突破してしまうことも。メタパルトとの補完は抜群で、コノヨザルやテツノカイナなど誘導された格闘ポケモンを鬼火で機能停止させ、一気にサイクル戦を有利にすることができた。

 

6. ギャードン(ギャラドス)

 前シーズンに続いての切り札で、サイクル戦の要。物理受けはもちろんのこと、挑発でガアやラッシャを機能停止させ、そのまま龍舞の起点にするなど、仕事は豊富。テツノカイナには一見不利だが、じつは地面テラスを切れば有利対面になるため、フェアリー打点なしの弊パーティーの中ではいちばんカイナを仕留めたポケモンだったりする。

 

 じつはドドゲザンをのぞいて使用率TOP15圏内に入っているポケモンがいないため、なかなか環境に逆張りな構築となっていた。最終日にFFのしぐなるさんとマッチングして気づいたが、けたぐりマスカーニャ一匹にこちらのメンツがほとんど縛られてしまうという欠陥がある。使用率がかなり減ったうえ、鉢巻型がセグカミに駆逐されてしまったであろうことから、そこまで重く感じたことはなかったが。マスカーニャが減った原因であろうハバタクカミとセグレイブに対抗するための編成がマスカーニャに弱いとは、環境の循環を感じる。

 

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●作品紹介(このブログのノルマ)

 今シーズンはドラパルト大活躍ということで、ジャック・ヒギンズの『鷲は舞い降りた』を紹介しておきます。ドラパルトとの関係性は……飛行機と秘密作戦(??)。チャーチル暗殺のため、命を駆けて作戦に臨むドイツ兵たちのストーリーです。報われない結末を迎えることを読者たちは知っていて、登場人物たちも予感してはいるんですが、破滅が迫る中でも、最期まで運命に抗おうとする姿がしびれます。

【ホメロス】『イリアス』「第4歌」──上位存在からすると人間ちゃんは猫みたいなもの?

 ゲームのやりすぎか身体がなまってきていたので、近くの海岸で身体を動かしてきた。息を切らしてベンチで読んだのは、ホメロスの『イリアス』だ。この前、ここで読んだのはヘミングウェーの『老人と海』だった。このふたりを並べるのはおかしな感じがするが、どちらの作品も、人間が自然と関わる“物”の一部であることを思い起こさせてくれる。

 ホメロスの神聖な世界観の根元は、聖書と同じく「簡潔さ」にある。といった作家の名前は思い出せないが、『イリアス』の文章は、複雑ないいまわしもなく、ごてごてとした飾りつけもない。それでいて、信じられないほど大きなスケールで作品のイメージが広がっていく。あらやる感情も、自然も、死も、すべてが人格化した秩序の中で調和している。ホメロスひとりだけではなく、この話を伝えていった古代ギリシアの人間たちの経験や宗教感がこの作品の世界観を構築している。柄谷行人が「シェークスピアは3人の魔女を実在する存在として描いている」と書いていたことを思い出した。『イリアス』のような作品を世にふたたび生み出すには、一度文明が先史のレベルにまで後退しなくてはならないのだろう。

 『イリアス』の「第4歌」には、トロイエを贔屓するゼウスにヘレが怒り、口喧嘩するワンシーンがある。ゼウスにもヘレにもそれぞれ“推し”の街があって、「もしおれの可愛がってる街を滅ぼそうとするなら、おまえの推してる街滅ぼすからな」とかなんとかいいあっているわけだが、これ、SNSでちょっと前にバズった「人間が猫ちゃんを可愛がってるように、上位存在も人間ちゃんを可愛がっているのか?」というツイートのような構図だ。アガメムノンたち英雄が、山羊肉を神に貢いでいるのも、猫ちゃんがネズミの死骸かなんかを咥えて飼い主にプレゼントしてるようなものなんじゃないか。いや、猫は、人間を下に見ているだろうから例としては不適当か……。

 ギリシア神話の世界観では、あらゆるものが人格化されており、われわれの行動すべてが、その人間関係の中に組みこまれている。『老人と海』の主人公である年老いた漁師は、海の生物たちを友だち扱いして、ひとりで海にいる孤独をやわらげようとするが、「なんらかの人間関係の中にある」という感覚は、人間の精神の安定に必要なものなんだろう。

【スピノザ】『エチカ』「第三部」──SNSの誕生祝いとかいう孤独を加速させる文化

 一昨日くらいから頭痛が酷くて、すべてにおいて無気力になっている。気圧がかわったわけでもショックな出来事があったわけでもないため、どう考えてもポケモンSVをやらなくなったことによる離脱症状である。アルコールにしろカフェインにしろ、こういうので引き起こされる憂鬱や不安というのは、時間が経てばなんとかなることが多い。下手にさわがず、時が過ぎるのを待つべきだろう。

 昨日から頭痛に耐えながら『エチカ』の「第3部 感情の起源および本性について」をパラパラと読み返している。人間のさまざまな感情を抽象化して、「定理」から成り立つもの、として整理してしまっているのが、ほんとうにすごい。人間、憤怒や憎悪にとらわれたら、自分の思考を整理すべきだというが、『エチカ』の「第3部」は、めくっているだけで、こちらの感情が、なにかしらの定理によるものとして落としこまれていく。
 わたしは、SNS上のお誕生日祝い文化が嫌いである。基本的に友だちへの祝福は盛大にしたいため、以前は知り合いの誕生日があるたび、絵を描いたり、誕生日プレゼントを購入して送ったりと、手間をかけていた。しかし、いざこちらの誕生日となると、だいたいのひとは、おぼえていないか、もしくは反応すらしてくれない。わたしの存在など羽虫のようなものなのか──。こういうことが続いて、いまではSNSの誕生日がすっかり嫌になってしまった。孤独を加速させるおそろしい文化だ。
 この「誕生日を祝い返してもらえない悲しみ」は『エチカ』の「第3部」では、「愛に基づいて、あるいは名誉を期待して、ある人に親切をなした人は、その親切が感謝をもって受け取られないことを見るなら悲しみを感ずるであろう。」という「定理42」に該当する。この「定理42」を解体していくと、「愛するものにはできるだけ愛し返されようとする」(定理33)とか、「ほかのひとを喜ばせたら自分自身を喜びをもって観想する」(定理30)という定理がその基盤にある。そしてそれらもまたほかの定理によってなりたっていて、感情の根本を探っていくうちに、自分がいたって論理的な原則によって動いている(動かされている)ように感じられてくる。
 わたしは、どうも悪感情に囚われすぎて、自分を見失っていたようだ。スピノザによれば、憎しみを除去できるのは、“愛”である(定理43)。自分の誕生日をおぼえてもらえてないとか、そういうちいさいことを考えているのが、そもそも苦しみのはじまりだ。直前の記事など、「○○周年記念みたいな体裁がめんどい」とかなんとか、どうでもいいことを野次っていて、頭のおかしなひとではないか。小事にまどわされることなく、ただ愛をもって他人と接する。これこそが幸せへの道ということを忘れていた。『プリティーリズム レインボーライブ』の26話も「みんなに愛を届けていきたい」といっている。 

 わたしは生まれ変わった。これからは、世のためひとのため、愛にあふれた生き方をしていくことを心がける。

【鎌倉文学】『徒然草』「第231段」──「○○周年を記念して~」みたいな体裁で企画がはじまるめんどくささ

 FFの信国さんがツイッターエラリー・クイーンの長編ATB企画をやっている。「ドルリー・レーンシリーズ完結90周年を記念」らしいが、なにが記念すべきことなのか意味がわからない。こんなんいいはじめたら、「ドルリー・レーンシリーズ生誕○○周年記念」「国名シリーズ完結○○周年記念」「フレデリック・ダネー没後○○周年記念」、なんでもアリではないか(悲劇四部作内の人気投票ならまだわかるけど)。
 近年、ライツヴィル以降の作品が越前訳でまたあたらしく読めるようになりはじめている。『十日間の不思議』(じつは2012年の文春ATBでは200位圏内にも入っていない)あたりは近年流行りのテーマとの結びつきもあって高順位が見こめるし、ランキングの結果が気になるひとは多いだろう。そんなわけで「なんかATB企画やりたいのでATB企画やります」でべつにいいのに、なんかのきっかけによってついでにはじめるような体裁が取り繕われるのは、なかなかにめんどくさいものがある。

徒然草』の「第231段」に、料理の達人である別当入道のエピソードが紹介されている。あるひとのところで、みごとな鯉が出されたので、その場にいた人たちは別当入道の包丁さばきを見たいと思ったが、リクエストするのも不躾だということで躊躇していた。そこで別当入道が「このごろ百日ほど鯉を料理しています。今日だけ切らないわけにもいかないので切らせてください」といって、みんなに気を使わせることなく、包丁さばきをお披露目した、という筋だ。
 これをきいて西園寺実兼が「ほかに切るひとがいないなら私が切ります、でいいだろ」とコメントしており、吉田兼好もそれに同意を示している。百日も鯉を切り続けているなんて意味不明で、そんな前置きを用意してまで、「なんかのついでにやる」、というような体裁をとるのは興醒めだ、とここでも触れられている。

 ATB自体は、その時代ごとにどのような作品が支持されていたかを知るための指標として価値がある。近年、なんかブロガーだか企業だかが怪しげなランキング企画を連発しているので、胡散臭い雰囲気をおびてきているけど。わたしの好きなクイーンの長編として、『フランス白粉の秘密』、『オランダ靴の秘密』、『Xの悲劇』をあげておこう。

【鳥山明】『ドラゴンボール 24巻』──フリーザの圧倒的な“力”に救いを求めている

 マキシマム・ザ・ホルモンの「F」は、マンガ『ドラゴンボール』の悪役であるフリーザのテーマソングだ。

 イントロが始まってすぐにオウム真理教における殺人の隠語「ポア」がなんども繰り返され、「独裁」「虐殺」「プロパガンダ」といった物騒なことばが並び、「笑って踏み潰す!!」の声とともにフリーザがほかのキャラクターたちを虫けらのように殺していく光景が歌詞から広がっていく。
 強大な力をもつフリーザが、あらゆる秩序を破壊して世界を思うがままに支配する。歌詞の中でしっかりと「怯え泣くは我ら民」といわれているのにも関わらず、きけばきくほど、精神が高揚していく。自分自身がフリーザになったかのような気にまでなってくる。暴君のカリスマに飲みこまれていく感覚とはこういうものじゃないか、と思わされる曲だ。

「わたしの戦闘力は530000です。ですがもちろんフルパワーであなたと闘う気はありませんからご心配なく…」
(鳥山明DRAGON BALL』モノクロ版 24)

 この時点で「いや強くしすぎでしょ」となる悟空ですら、戦闘力は180000くらい。フリーザと対峙していたピッコロさんの42000だってこの時点の作中ではトップ5くらいには入っていたであろうに、さらっと絶望的な数値が飛び出してくる。フリーザの圧倒的な「力」を印象づける名シーンだ。曲名の「F」は、フリーザの頭文字であることはもちろん、Force(力、強さ、強要)のニュアンスもこめられているのではないかと思わせられる。


 多くの人間は、たいしてとりえも個性もないから、特定の個人や社会にナルシシズムを投影する。いまツイッターでイーロンがめちゃくちゃやらかしている最中だが、「イーロン・マスクの天才ぶりに気づかない凡人どもぉ!!」とかなんとかいっている層は、「天才であるイーロンに共感を示せる非凡な自分」というように、なんかまわりくどい形で自分を誇示しているわけだ。
 そういうひとたちは、当のカリスマからすれば、数ある「養分」のひとつにすぎない。『ドラゴンボール』でいえば、フリーザに技のためし撃ちをされてバラバラになる雑兵とか、そのていどのものだ。しかし、かれら自身は自分のナルシシズムフリーザ様に投影してるから、むしろ役に立てて光栄、とか思っているかもしれない。フリーザ様による至高のスパチャなのである。

 人間の権力が最大化するのは、大勢の人々が同意にもとづき個々の権力を、一個の私人または公人のうちに統合するときである。
(トーマス・ホッブズリヴァイアサン角田安正訳)

 現実には手に入れることのできない無限の権力を、自分の代わりに、圧倒的な権力者が持ってくれている。それが救いになっている人間もいるだろうが、じっさいに生活にからんでくると、やはり「怯え泣くは我ら民」だ。一般人は一般人なりに、悟空と入れ替わったギニューにダメージを負わせたり、超サイヤ人覚醒のきっかけとなったりと活躍できたクリリンを目指して抗いましょう……。あまり関係ないけど、24巻の時点でブルマがまだヤムチャと恋人だった事実がつらい。