鍋の中にはカルプフェン

こい(@gyaradus)のブログ

【サヴァラン】『美味礼賛』──18世紀のフランスでもトンデモ健康法で死者が出てた

 18世紀のフランスですでにダイエットはブームになっていたようで、ブリア・サヴァランの『美味礼賛』には、「毎朝酢を一杯ずつ飲む」というとんでもない健康法を実践する美少女が登場する。

「いやいや、そんなことしたら死ぬんじゃないのかね?」とお思いの読者もいるだろう。死ぬのである。トンデモ健康法で18歳の少女が死んでしまうエピソード「108 酸の危険」は、婦人の間で流行していたトンデモ健康法に注意をうながすために書かれたものだ。
 やっかいなことに、この手のトンデモ論を広げる輩は、自分に責任なんてないと思っていることもすくなくない。 「“個人の見解”です」とか「押しつけてるわけではなく『こういうやりかたもあるよ』といっているだけ」みたいなことをいっておけばなんでも許されると思っている人間もいる。トンデモ論はまちがいなく世に害となるんだから、サーティーワンのメニューの好みかなにかと同じ次元で、「価値観はひとそれぞれ」みたいなバカバカしい相対主義を持ちこんではいけない。てか、そもそもそんなものは“論”ではない。犠牲者がでる前に、しっかりと批難しておくべきである。

 それは、神というものは、いかなる神も、
人間に対して悪意をもつものではなく、僕もまたこういうことを一つとして悪意でなしているのではないが、しかし偽物をそのままにしておいて、真物をくらますということは、断じて僕に許されてはいないということが、
彼らにはなかなかもってわからないからなんだ。
(プラトン『テアイテトス』田中美知太郎訳)