鍋の中にはカルプフェン

こい(@gyaradus)のブログ

文学

【イタリア文学】『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』――「2022年の抱負」はどんどん発信してしまえ

2022年になった。どこのブログも新年には「今年の抱負」を発表するのが常のようで、それに倣ってわたしもここに「2022年の抱負」を公開する。 1.Twitterをやめる 新年早々、不穏な抱負である。このブログを読んでいるひとのほとんどはTwitter経由だろうか…

【チェスタートン】『木曜日だった男』──1月3日の新幹線に乗ってはいけないという教訓

年末年始というやつは、体力の浪費以外の何ものでもない。中でも最低最悪なのが、新幹線での移動である。 この国の人間はとてつもなく頭が悪いようで、どいつもこいつも正月休みからいきなり1月4日に仕事を再開するという愚行をとる。新幹線のホームはわらわ…

【プラトン】『ゴルギアス』『プロタゴラス』――不正がバレないよりは冤罪になったほうがいい!?

第二のタイプはソフィスト、詭弁家だ。「~らしさ」を求め、他人の目に哲学者らしく映ることに幸福をもとめる。かれらはこれを真剣に研究している。 (アルトゥル・ショーペンハウアー『自分の頭で考える』鈴木芳子訳) 読書について (光文社古典新訳文庫) …

【ゲーテ】『若きウェルテルの悩み』──自殺しようとしているひとを止めるのは偽善?

すこし前、橋から飛び降りようとしていた自殺志願者を引き止めた高校生2人がSNS上で非難を浴びていた。見たところ、「死にたい」と感じている人物は死ぬことこそが本人にとって幸福なのだから、それを妨害するような行為は“偽善”でしかない、という見解が多…

【ホラティウス】『詩論』──へたに蘊蓄で彩られるとハリボテっぽさが増して白ける

新装版 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社ノベルス) 作者:麻耶雄嵩 講談社 Amazon 麻耶雄嵩のデビュー作『翼ある闇』に出てくる美術関連の蘊蓄は、半分ほどでたらめということをご存知だろうか。これは新装版ノベルスのあとがきで麻耶本人が告白して…

【ギリシア文学】『ホメロス:史上最高の文学者』――原典を読むということ

ホメロス:史上最高の文学者 (「知の再発見」双書) 作者:アレクサンドル・ファルヌー 創元社 Amazon パラパラと開いたところ眼に飛びこんだ古代ギリシアの彫像や工芸品、それらをイメージした絵画や、当時の文明の復元図の数々に惹かれて手に取った。 ホメロ…

【サヴァラン】『美味礼賛』──18世紀のフランスでもトンデモ健康法で死者が出てた

18世紀のフランスですでにダイエットはブームになっていたようで、ブリア・サヴァランの『美味礼賛』には、「毎朝酢を一杯ずつ飲む」というとんでもない健康法を実践する美少女が登場する。美味礼讃 (上) (岩波文庫 赤 524-1)作者:ブリア=サバラン岩波書店Am…

【魯迅】『野草』「凧」──“あやまりたい欲”の身勝手さ

魯迅に「凧」という掌編がある。少年時代、弟がこっそりとがんばって作った凧を、語り手は「こんな子どもじみたもん作るな!」と少年らしい支配欲で壊してしまう。しかし20年経ってから、その行為の残酷さに気づき、突如として謝りたくなる……、という筋だ。 …

【ドストエフスキー】『悪霊』──ステパン先生ってSNSでよく燃えてそう

SNSをやっていると、明治~昭和中期あたりの作家・思想家の発言を切り抜いたものが流れてくることがある。1行程度のことばで「○○とは△△である」のようなラベリングをしている(ように見える)ものが多く、なにかしらの見解を正当化したいひとが「昔の偉いひと…